トライアスロンで使うバイクやそのバイクポジションて悩みますよね。
毎年バイクメーカーはトライアスロン専用のモンスターバイク(性能も価格もぶっとびのバイクのこと)を発表しています。
そういうのを見ると、
普通のロードバイクじゃだめなのかな?
と不安になります。
また「トライアスロンのバイクポジションは前乗りが基本」というのも聞いたことがあると思います。
でも「前乗り」って本当に効果があるのかよく分からないし、どんな風にバイクをカスタムすればいいのかも初めは分かりませんよね。
「そもそも前乗りって何?」という人もいると思います。
「トライアスロン バイク ポジション」で検索すると、バイクコーチやショップの見解が色々出てきます。
でも、彼らはプロ。無料で有益な情報をすべて披露してくれません。当たり前ですが、重要な部分のさわりみたいな事しか載っていません。
トライアスロンのデビュー前、もしくは1、2回大会に出たぐらいの段階で、こうした表面的な情報だけを集めていると、わたしがたどったような遠回り(詳しくは後述)をする危険性があります。
わたしは残念ながら強豪トライアスリートでも何でもありませんが、苦手なバイクで試行錯誤してわかってきたことがあります。
ここでは、その内容を整理してお伝えします。
結論としては、
ただし、レース時に限り前乗り用の機材ドーピングは有効。
それでは詳しくご説明します。
目次
[大前提]トライアスロンはノーマルロードバイクで戦える!
トライアスロンに出るといっても、決して専用のTTバイクを買う必要はありません。
いわゆる通常のロードバイクで全然大丈夫です。
むしろ初心者はエアロロードバイクやタイムトライアル専用バイクにうかつに手を出すべきではありません。
なぜなら、TTバイクは特殊なフレーム設計(ジオメトリー)で乗り方が限定されるからです。
「自転車に乗る」という意味で少し応用編になると言えます。
TTバイクのポジションはロードバイクのノーマルポジションよりも、身体の重心がぐっと前がかりになります。
それでもハンドル操作などに支障がでないようにフレーム設計が工夫されているのですが、だからといって簡単に乗れるわけではありません。
トルクのかかり始めるタイミングが、ロードバイクよりも遅れるため、どうしても下に踏みつけてパワーを出すようなペダリングになりがちです。
それでもパワーが結果的に出るならいいだろ、と思われるかもしれませんが、ずばり言います。
そのパワーアップにはあまり伸び代(ノビシロ)がありません。
ペダリングがいつまでたっても洗練されないからです。
またTTバイクやエアロロードは、ステムやシートポストの選択肢が限られるため、自転車でもっとも重要な適正ポジションに合わせることが簡単ではありません。
つまりTTバイクは、ある程度自転車の乗り方を身につけた中級者以上が、うまくバイクに自分をフィットさせながら乗るべきものなのです。それができる人にとっては確かに効果的でしょう。
「これに乗れば巡航速度が◯km/hアップ!」みたいな単純な話ではないのです。
それにあれは、アイアンマンなどのロングで、延々と続く平坦路を走り続けるようなシチュエーションで効果を発揮します。
そこで1ワットでも出力をセーブしようという時に、初めて値段に見合うだけの働きをすると言えるでしょう。
スタンダードのバイク40km程度でしたら、ロードバイクで十分です。
というか、日本国内のレースでしたら、コーナーやアップダウンも多いので、ノーマルロードバイクの方が走りやすいと言えます。
ロードバイクの前乗りポジションは速度アップの即効性あり、ただし弊害もあり
さて、TTバイクではなくノーマルロードバイクでトライアスロンに出ることにしたとして、次に気になるのは、そのロードバイクを前乗りポジションにするかどうかですよね。
はっきり言いましょう。
前乗りポジションは速度アップに直結します。
これは身をもって体験したので、断言できます。
でも弊害もあるということをお伝えしておきます(経験者は語る)。
前乗りポジションが有効なのは、ざっくり言うと、上半身が低くなり、前面投影面積が少なくなって、空気抵抗が減るからです。
でも、それと引き換えに重心が前がかりになるため、クイックなハンドル操作がしにくくなり、そして何よりペダリングがTTバイクと同様に下に踏みつけるペダリングになりやすい、という弊害があります。
順を追って説明します。
ロードバイクの前乗りポジション(いわゆるTTポジション)というのは、ロードバイクのBB(クランクの付け根)を中心として、体を前方に回転移動した状態です(イメージ図参照)。
前方向にスライドするのではなく、回転、つまり前方向かつ下方向に体が動いたものであることにご注意ください。
このポジションを取るためには、バイクのセッティングが必要になります。
(1)前乗り用シートポスト
(2)DHバー(エアロバー)
(3)長めのステム
(4)前乗り用サドル
(1)前乗り用シートポスト
まず、これがないと体を前方向に移動することができません。
通常のシートポストでサドルを目いっぱい前に出しても、限界があります。
わたしのオススメはPROFILE DESIGN(プロファイルデザイン)のファストフォワードシートポストです。
これを使えば、ぐっと前にサドルをせり出してつけることができます。
ファストフォワードシートポストには、アルミタイプとカーボンタイプがあります。
わたしは振動吸収性がよくなるのかな、と思ってカーボンタイプを買いましたが、アルミタイプは価格も手ごろですし、それこそ40km程度の距離であればそこまで違いは出ないので、アルミでもよかったなと今更思っています。
BBを中心に前回転するのが前乗りポジションですので、このシートポストに変えたら、サドル高を若干低くする必要があります。
BBからサドルまでの距離がノーマルシートポストの時と変わらないようにセッティングしましょう。
(2)DHバー(エアロバー)
トライアスロンでおなじみのDHバーは、やはり前乗りポジションには必須アイテムです。
前がかりになった体重をハンドルで支え続けるのでは疲労してしまいます。
もちろん体重の多くはペダルに乗せるべきなのですが、ハンドルではなくこのDHバーに体を預けて安定させることは必要です。
DHバーは各メーカーが出していますし、バーの形状も色々あります。
先端がやや前上がりの方が握りやすいです。
しかし一番大事なのはハンドルにどのようにバーを取り付けるかです。
わたしのオススメはハンドルの下にDHバーがつけられるもの。
ハンドルの上だと、思ったほど前乗りポジションにしても上半身が低くできませんので。
これについては、詳細な記事を書きましたのでご参照ください。
(関連記事:ロードバイクをTTバイク化するのにオススメのDHバー[それはプロファイルデザイン!])
(3)長めのステム
これは必須ではありませんが、必要になる場合が多いパーツです。
前乗りポジションになるということは、それまでよりも体がハンドルに近くなるということです。
ノーマルポジションの時にちょうどよかったステムのままだと、ハンドルと腕の位置が近くなりすぎて、縮こまったようなフォームになる恐れがあります。
そうするとパワーも出ませんし、肩や首がこりやすくなります。
シートポストを交換した後の段階で、自分で確かめながら必要なステムの長さを探りましょう。
(4)前乗り用サドル
これも必要になる人とそうでない人がいます。
多くのサドルは前乗りポジションにすると、股間とくに尿道のあたりが非常に圧迫されて、不快というより痛いです。
かと言ってサドル自体をあまり前下がりにすると、体がずるずる滑ってしまい、それを支えるために腕や脚の筋肉を使ってしまいます。これはおおいなる無駄です!
オススメはサドルを前下がりにしなくても、骨盤を前傾して預けられるタイプです。
トライアスロン用サドルにはそうしたタイプが多くあります。
サドル前側がばっさりなくなっているタイプや、尿道があたる部分に溝や穴が開いているタイプですね。
わたしはCOBBのサドルを使っていましたが、すこぶる快適でした。
さて、(1)~(4)のようなパーツを用いると、ノーマルロードバイクでも前乗りポジションは実現できます。
そして、このポジションにすると巡航速度がすぐに上がる、という即効性があります。
わたしの場合、ノーマルポジションと前乗りポジションでは、平均速度が1~2km/h変わります。これは大きな違いですよね!
即座に速度アップが実現できる前乗りポジションは「蜜の味」です。
しかし、本当のバイクの走力アップというのはそんなに甘くありません。
わたしの実体験ですが、上記のようなパーツを一式買って前乗りポジションができるようにバイクをカスタムしました。
たしかに一段階それまでよりアベレージが上がりました。
30km/h巡航をしていた初心者レベルから、少しレベルアップして32~33km/hぐらいはレースで全力の時は走れるようになりました。
しかし、逆に言うとその速度域からは何年経っても抜け出せなくなってしまったのです。
これが前乗りポジションの弊害です。
わたしのようにロードバイクに乗り始めて、結構早めの段階で前乗りポジションを基本にしてしまうと、丁寧に丸くペダルを回す技術や、体の重心を感じながらバイクを操作する技術(こうした操作技術も結局は速度につながります)など、本来ロード乗りなら自然と身に着いていく基本がいつまで経っても身につかないのです。
ただがむしゃらに体重を乗っけて、ペダルを縦に縦に左右で踏みかえるようなペダリングが染みついてしまい、現在その矯正に苦労しております(涙)。
自分の反省を含めてお伝えしたいのは、「俺は(わたしは)あくまでトライアスロンのためにバイクに乗るんだから、前乗りポジションでいいや」と安易に飛びつかない方がいいよ、ということです。
速くなるためにはノーマルポジションが必須[基本なくして応用なしと心得よう!]
「前乗りポジションはだめ?だったら、どうすりゃいいんだよ!」と思いますよね。
現段階でのわたしのオススメ方法は、
ノーマルポジションのロードバイクで日々トレーニングする!
レースは前乗りポジションにして挑む!
です!
ここまで説明した通り、TTバイクに限らずロードバイクの前乗りポジションも、実はかなり変則的な乗り方です(ローディーからしたら当たり前だけど、トライアスリートからしたら意外な事実!)。
その前乗りポジションに最初から慣れてしまうと、基礎が身につかないままなので、思ったより速い段階で頭打ちになります。
基本なくして応用なし!
逆に言えば、
基本ができていれば応用も可能!
はっきり言って、走力アップに近道はありません。
つまらない結論かもしれませんが、ロードバイクはとことん教科書通りのノーマルポジションで練習しましょう。
教科書通りというのは、いわゆるクランクを3時の位置にした時に、クランク先端の垂直線上に膝がくるようにしたり、クランクが6時の時に膝が伸び切らないようにしたり、ハンドルは肘がやや曲がるぐらいに、というやつです。
大抵の自転車専門書には書かれています。
このポジションで、総合的な自転車に乗る力や技術をつけていくのが、結局遠回りのようで実は近道なんです。
どうしても機材を変えて一発解決したくなりますが、それだとわたしのように一瞬速くなっても、そこから先が停滞します(涙)。
「それでもレースは1秒でもタイムを縮めたいんだよ!」
そうですよね、もちろんです。
なので、わたしの提案といいますか、まさに自分がそうしようとしているのが、
レースの時だけ前乗りポジション作戦!
これが現段階での答えです。
確かに前乗りポジションの即効性は捨てがたいものがあります。
ですので、普段はノーマルポジションで練習して、ペダルをきれいに回す感覚や、タイヤが地面を噛む感覚、そしてトルクが抜けるタイミングやそれに合わせて踏むリズムなどを身につけつつ、レースの時は前乗りポジションのセッティングに変更しちゃいましょう。
もちろんぶっつけ本番でそれをやるのは、さすがに危険です。
レース前2〜3週間ぐらいから前乗りポジションに変えて、体を順応させましょう。
繰り返しになりますが、
基本ができていれば応用も可能!
つまり、ある程度ノーマルポジションで乗り込んで、基礎的なバイクに乗る技術が備わっていれば、変則的な前乗りポジションにしても、数回乗ればトルクをかけ始める位置などを感覚を頼りに修正して、問題なくそのポジションで力を発揮できるはずです。
ノーマルポジションで乗り込んで、巡航速度があがっていれば、そこから前乗りポジションに変えるだけで、さらに2km/hぐらい速度アップが可能になるでしょう。
「トライアスロンのためのロードバイクポジションを考えよう!」まとめ
いかがでしたでしょうか。
整理すると、
・国内のスタンダードディスタンスのトライアスロンに出るのであれば、ノーマルのロードバイクで問題なし。
・ロードバイクを前乗りポジションにすることは可能。たしかに速度もアップする。
・ただし前乗りポジションで普段から練習していると、「バイクに乗る技術」が身につかず早めに頭打ちになる。
・そのため、練習は基本的にノーマルポジションで行う。
・レースの時(少し前から)だけ前乗りポジションで、機材ドーピングをする。
これがわたしが初心者~中級者までのトライアスリートにおすすめしたいバイクポジションのアレンジ方法です。
いずれにしても、前乗りポジションに変えた場合に、乗り味がどれぐらい変わるか実感しておくのは、とても大事です。
いざ、レース本番直前にあわてて必要なパーツを揃えて前乗りポジションにしてみたものの、期待していたほど速度が上がらなかったら焦りますからね。
まず、一度必要なパーツを購入して、前乗りポジションで実際に走ってみて「うん、確かに速度が上がるな!」と実感しておけば、それからは日ごろノーマルポジションでコツコツ練習をしている中でも「いざとなったら、前乗りポジションでこれより速度アップするのさ」と思っておけば、気持ちにも余裕が出ていいトレーニングができるというものです。
先ほど挙げた前乗りポジションに必要なもの(1)~(4)のうち、少なくとも必須アイテムとした(1)前乗り用シートポスト、(2)DHバーは、とりあえずつけてみた方がいいでしょう。
わたしのオススメは、(1)前乗り用シートポストは、頑丈で気兼ねなく使えて価格も手ごろな「Profiledesignファストフォワード・アルミシートポスト」です。
(2)DHバーは、ハンドルの下にバーをつけられる「ProfiledesignのL2ブラケットキット」もしくはのブラケットキットが標準装備された「V+シリーズ」のDHバーです。
ぜひ試してみてください。
私、AmazonのKindle書籍として
『アラフォーからのトライアスロン』を出版しました!
内容を一言で言うと、館山トライアスロン挑戦記です。
読み終わったら、あなたは必ずトライアスロンをやりたくなる!!
というわけで、ぜひ試し読みしてみてくださいね。
追記:Kindle Unlimitedなら読み放題で読めます。